「カネラ兄様……?」

 カネラ王子が駆け寄ると、長い金髪を一つに結んだ彼――クレマ王子は驚いた様子でなぜか後退り、何かに躓いたのかよろけてそのまま倒れ込んでしまった。

「クレマ!」

 慌てたようにカネラ王子がその身体を支える。
 よく見ればその身体は傷だらけだった。腕や脚に巻かれた包帯からは血が滲んでいる。

「大丈夫か?」
「……だ、大丈夫、です」

 そう小さな声で答えた彼はカネラ王子に支えられながらゆっくりと立ち上がった。

 やはり兄弟だ。カネラ王子の話によると母親は違うのかもしれないが、髪色といい良く似ていると思った。歳もそれほど変わらないように見える。
 しかし、なぜか彼は兄であるカネラ王子の顔を見ようとしない。

「一体何があった」

 カネラ王子がそう訊ねるが、クレマ王子は心なしか青ざめた顔で唇を震わせたまま答えようとはしない。
 その姿は、まるで何かに怯えているように見えた。

「竜に、やれらたのか?」
「!」

 カネラ王子の言葉にギクリとする。
 彼もやはり同じことを考えていたのだ。

 ――リューが、この街を襲ったのではないかと。