「一体、何が……」

 ローサの小さな声が聞こえた。
 あのカネラ王子も口をポカンと開けたまま声が出ないようだった。

 街は酷い有り様だった。
 いたる場所で煙が上がり、露店はめちゃくちゃ、倒壊している建物もあった。
 人の姿はなく、しかし折れた剣や矢など武器らしき残骸があちらこちらに落ちていて。
 ここで、何らかの争いが起きたことは明白だった。

(まさか……)

 呼吸が震えて、ドクドクという心臓の音が頭にまで響いていた。
 だって、この光景にはすごく見覚えがあった。

 7年前嫌と言うほど目にした、魔物の襲撃を受けた街の姿だ。

「まさか、アイツが……?」

 メリーのそんな呟きに頭が真っ白になりかけた、そのとき。

「クレマ!」

 カネラ王子が急に大声を上げ、ラクダを降りて駆けだした。
 その先には、今しがた建物から出てきた金髪の男性がこちらに気付いて立ち止まっていて。

(クレマ……確かカネラ王子の弟)

 無事な人がいたことにホッとして、私たちもラクダを降りて王子の後を追った。