――そして。

 リューらしき目撃情報が得られたのは、王都を出てから5日目のことだった。

「本当ですか!?」

 立ち寄った小さなオアシスの村で、私は思わず歓声を上げていた。

「は、はい。数日前の明け方、大きな竜が飛んでいくのを見たと、この子が……」

 そうしてその女性は自分にぴったりとくっついている3、4歳の女の子を見下ろした。

「どっちの方に飛んで行ったか覚えてるかな?」

 私がそう訊ねるとその子はおずおずと空を指差した。

「あっちの方に飛んでいったよ」

 その方角は『魔族の街』の方に間違いなくて、私達は顔を見合わせしっかりと頷きあった。
 でも母親だろう女性は娘の話に半信半疑のようで。

「本当に竜だったの? 大きな鳥じゃなくて?」
「違うよ! だって、すごくすごーく大きかったもん!」

 手を大きく広げて教えてくれた女の子に「ありがとう」と心からお礼を言うと、その子は嬉しそうに笑ってくれた。