――でも。

 どんなに彼の王子様然とした立派な姿を目の当たりにしても。

(彼は、王様になりたいがために私を利用しようとしたんだ)

 そうしてまた昨夜の一件を思い出してしまい私はぎゅっと目を瞑った。

「コハルさま?」
「え? ――あ、ごめん。なんでもないの」

 メリーを抱っこしていた腕に知らずのうちに力が籠ってしまったみたいだ。
 不思議そうにこちらを見上げるメリーに苦笑して、私はもう一度カネラ王子に視線を向けた。

 お詫びの気持ちにと、私たちについて来た彼。

(でも、やっぱり彼のしたことは簡単に許せることじゃないし、油断しちゃダメだ)

 そんなふうに思わなくてはならないことが、とても悲しかった……。