本当はすぐにでも出発したかったけれど、長旅になるのなら昼間の暑い中を進むよりも日が落ちてから進んだ方が効率が良いと言われ、今はこうして涼しい風が通り抜ける木陰で身体を休めている。
 でも当然ながら気持ちは全く休まらず、この何も出来ない時間がとても歯がゆく感じられた。

 ……それにしても。

(やっぱり人気あるんだなぁ)

 未だ村人たちに囲まれ何やら話し込んでいるカネラ王子に視線を向ける。

 先ほど私たちに食事を運んでくれた女性たちも、カネラ王子にとても感謝しているようだった。
 この場所で収穫出来たという野菜や果物がふんだんに乗った色鮮やかな料理を私が絶賛したときだ。

「これも、カネラ様のお蔭です」
「え?」

 そうして彼女たちは嬉しそうに語ってくれた。
 元々は本当に小さな水場だったこの場所をここまで緑豊かなオアシスにしたのは彼なのだという。

「この場所で、こんなにも作物が穫れるなんて思いもしませんでした」

 そう笑顔で話す彼女たちを見て、私も釣られて笑顔になっていた。