「魔族の街、か……」
泉のほとりの木陰に腰掛けて、私は溜息交じりに呟いた。
カネラ王子曰く、件の『竜の洞』へはここからラクダに乗って5日はかかるらしく、しかも『魔族の街』と呼ばれるエリアにあるというのだ。
「危険な地域のようですし、十分に用心して参りましょう」
真剣な顔つきのローサに私はしっかりと頷く。
元々、私たちは魔族の調査のためにこの国にやってきたのだ。しかし「魔族から攻撃を受けている」という話は王子のでっち上げた嘘だとわかった。
けれど、そのエリア周辺が以前から治安が悪く、紛争の絶えない危険な地域だというのは事実らしい。
(そういえば、砂漠の国に援助するとかしないとか、いつか大臣たちが話してたっけ。……リュー、本当にそんなところにいるのかな)
しかし他に手がかりが何一つないのだから、今はその情報に縋りつくしかない。