するとカネラ王子は任せてとばかりに砂山の向こうを指差した。
「この先には小さいけどオアシスがあるから、一先ず日が高くなる前にそこまで辿り着けたら上々かな」
「……」
じとりと、私は彼を見つめる。
確かに有難くはあるけれど、彼は私たちを貶めて、つい先ほど私を襲おうとした張本人だ。今思い出してもぞくりと震えが走る。
そんな彼を、そう簡単に信じてしまっていいのだろうか。
でも、このどこまでも続く砂の大地をこのまま当てもなく進むのは確かに無謀。私だけじゃなくローサやメリーも危険に晒すことになってしまう。
(背に腹は代えられない、か……)
はぁと息を吐いて私はカネラ王子に言う。
「わかりました。道案内をお願いします。それと、ラクダありがたく使わせてもらいます」
すると彼は眠そうな目を少し大きくしてから「うん」と大きく頷いた。
「ただし」
すらりとローサが剣を鞘から抜いてカネラ王子に向ける。
「少しでもおかしな行動に出れば」
「わ、わかってるよ。わかってますって」
もう一度慌てたように両手を振った彼を見て、私はもう一度溜息を吐いたのだった。
――こうして、私たちは再びラクダに乗り砂漠の大地を旅することになった。