「その者は?」

 流石に護衛ではないと思ったのだろう、王様が不思議そうに訊ねて私が慌てて口を開く――より早く。

「竜帝の弟君でございます、陛下」

 そう答えたのは私たちの後ろに控えていたカネラ王子だった。
 王様が驚いたように目を大きくして改めてリューを見つめる。

「竜帝殿の……そうであったか。確かに、前の竜帝殿の面影があるわ。貴殿も思う存分宴を楽しむといいぞ」
「……」

 リューが無言で頭を下げるのを見て、少しヒヤリとする。
 しかし王様は特に気にする様子なくカネラ王子の方を見た。

「カネラ、長旅ご苦労であったな。お前も宴に」
「いえ、私は先に休ませていただきます」

 カネラ王子がそうして頭を下げて王様は苦笑する。

「そうか。相変わらずじゃな。しかし本当にようやってくれた。ゆっくり休むといい」
「ありがとうございます」

 そして、カネラ王子は一礼して王の間を退出していった。

(苦手そうだもんなぁ、飲み会とかそういう場)

 私も得意というわけではないけれど。
 しかしカネラ王子はこの国と竜の帝国とを往復したのだ。私たち以上に疲れているはず。
 本当にゆっくり休んで欲しいと思った。