アンネの背中に手を当てて、優しく抱きしめるも、たまらず今度は強く抱き寄せる。

「ダーフィット様」
「君にはかなわないよ」

 そんな二人から少し離れた場所では、ダーフィットが買ってきたおもちゃを開けて楽しむレオンハルトがいた。
 レオンハルトがよちよちと二人に近寄っていった瞬間、彼らはもう愛おしいという気持ちをぶつけるように強く強く抱きしめた──


 そんな二人の愛を一身に受けて育ったレオンハルトは、無事に成長をしていったのだが、王宮では泣き虫レオちゃんと呼ばれるほど臆病で身体も小さかった。
 クリスティーナと遊んでもいつも力で負けては母親であるアンネに泣きついていた。
 強くなってほしいと願いはするものの、ダーフィットの優しさを受け継いだようなその性格に、彼女は嬉しさをも感じている。

「アンネ、遅くなってすまない」
「ええ、大丈夫ですわ」
「レオンハルトは寝てしまったか」
「はい、クリスティーナ様と遊んで疲れたようです」

 王宮でのお茶会を終えたヴァイス一家はいつものように馬車に乗り込んだ。
 そのまま数十分という家への道を馬が駆け抜ける。