子供の姿の新月はとっくに過ぎたのに、子供のように不貞腐れた表情を浮かべるレオンハルトを自分から引きはがそうとする。
 でも男の人の力に抗えるわけもなく、彼に腕を掴まれた。

「コルネリア」
「はい……」
「大好き、僕の奥さん……」
「ありがとう、ございます……」

 嫌われたわけではなかったことに安堵して、そしてさらにレオンハルトの愛は加速する。

(もう、遠慮しないからね)

 そう言って彼はコルネリアの頭を優しくなでて、そっと唇を寄せた──



 そしてレオンハルトに異変が起こったのはその数日後だった。

「レオンハルト様っ!!」

 コルネリアがドアを開けて勢いよく部屋に入って来る。
 彼女の視線の先にはベッドに苦しそうにしながら横たわるレオンハルトの姿があった。

「コルネリア様」
「テレーゼ、様子は?」
「今朝、執務室で急に倒れられて、そのまま高熱で……」
「お医者様の到着は?」
「もうすぐです」

 しばらくして医師が到着して診察をしたのだが、病気の類ではなさそうということであった。