「お客様」



優しい声がひみかの耳に入って来て、ひみかはつられるようにして顔をあげた。



「試食は、お一人様一回が基本となっておりますので、お控え下さい」


「………あ!そしたらまた明日も来ます」



(明日もくんの!?ι)




男はニッコリ笑ってひみかが店を出ていくのを見届けた。



ひみかの心臓がトクントクン…と鳴って、いつもの平常心をなくそうとしている。



(どいしてこんなきゅんと締め付けられるような感じになるの?)



胸を抑えながら自宅に戻った。



明日も会いたいと思う気持ち。ひみかはあのパン屋さんの男に恋してしまっていたのだ。



一目惚れ。



それが一番正しいひみかの恋の名前。