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 そもそも入学当初、サクトは我が生物部に入るつもりなんてなかったはず。


 それなのに、先輩たちに捕まってしまった。あの大袈裟な勧誘、というか泣き脅しというか……


「キミが入部してくれないと廃部になるかもしれないっ!」


 実際にはそんなことはない。


 爬虫類やら両生類やらが好きなのに、母親に反対されて家では飼育できない、という生徒は毎年数人、必ず存在するものだ。


 今年だってサクト以外にも2名入った。


 しかし、そんな噓も方便みたいな、芝居がかった脅し文句に対して、サクトは半笑いしながら答えた。


「別にいいですよ、入部しても」


 他の新入生たちは足を止めることなく、『ごめんなさーい』と半笑いで行ってしまったのに。


 お人好しというか何というか……


 たぶん特に入りたい部活もなければ、反対に絶対に帰宅部になるという強い意思もなかったんだろうな。


 そして、自主的には動かない代わりに、付き合いは悪くないタイプなんだと思う。断るほうが面倒だと思っている可能性も否定できないけれど。