リョウカは自分を指差し、にーっと笑った。


「ちなみに名付け親は、私」

「ええっ?」


 唖然としているサクトを尻目に、リョウカはリュックの中から飴の袋を探し当てると、サクトの前に突き出した。


「今日のところは、いちごチョコとシュワシュワ飴で勘弁してね」

「……い、いただきます」


 サクトは戸惑いながら、ひとつ取り出すと口に入れた。


 リョウカはその様子を目を細めて、嬉しそうに見つめていた。


 そうして満足すると、リョウカも同じように飴を舐め始めた。


「さて……と、私も勉強を始めよっかな。ね、この電子辞書、私も借りていい?」

「は、はい……」


 すぐそばにリョウカがいる今のシチュエーションに夢心地なサクトは、さっきからリョウカの言いなりだ。


「なら私も岩藤くんと同じ英語にする!」


 学年が違うんだから、厳密には『同じ英語』ではないと思う……


 それでも2人は口の中でカラカラと同じ音を立てながら、教科書を訳し始めた。