リョウカがクスクス笑った。


「キシリトールガムって……岩藤くん、如何にも生物部の(きみ)っぽーい!」

「生物部のき……?」

「き、み!」


 サクトの瞳孔が全開になる。


 リョウカのクスクス笑いは止まらない。


「岩藤くん、もしかして自分が『生物部の君』って呼ばれてるの、知らない?」

「し、知らないですよ」

「そっか、こういうのって本人は預かり知らないこと多いもんね。運動部の女子たちの間で、そう呼ばれてるんだよ。毎日毎日、生物室の窓辺で雰囲気たっぷりに座ってるから。何て言うか……物憂げな感じ?」


 恋煩い中のサクトが『物憂げ』に見えるっていうのには同意する。誰が最初にそう呼んだかは知らないけれど、分かっているじゃないの。


 それにしても、こっそりリョウカのことを眺めていたはずが、逆に運動部の女子たちに愛でられていたなんて……