「あれ? 今日は遅いな……」
そうだね、いつもならピョンピョン跳ね気味に、真っ先にやってくるのに。
私たちが不思議に思っていると、雨の日の生物室に不釣り合いな明るい声が響いた。
「こんにちはー!」
それは、準備体操を始めたラクロス部員の集団とは反対側から聞こえてきた。
「えっ……!!」
さ、サクト、大丈夫!? 気を確かに!
「ごめんね。そんなに驚くと思わなくて」
制服姿のリョウカが、胸の前で手を合わせて生物室に入ってきた。
『許して』といたずらっ子みたいに、茶目っ気たっぷりの笑顔で謝った。
まったく神出鬼没なお嬢さんね。