会長が王子様っていうんだから、優雅にお茶なんか飲みながら、のほほんと学園の今後について考える――――ってな光景を想像していた。

 だけど実際は、部屋の中を三人の男性がバタバタと忙しなく駆け回っている。皆真剣な表情で、書棚を一生懸命に漁っていて。とてもじゃないけど、お茶をするなんて時間の余裕は無さそうだ。


「ん? ようやく来たか」


 その時、部屋の中央に鎮座している男性が、わたしを見ながらそんなことを言った。

 眩い金色の髪の毛にアイスブルーの瞳、スッキリとした目鼻立ちに、無駄なく締まった身体。外見だけ見れば、わたしの知っているこの国の第二王子、エルヴィス殿下そのものだ。
 だけど、口調とか、鋭い眼差しとか、不機嫌そうに曲げられた唇なんかが記憶と全く合致しない。

 だって、前に見掛けたときは、令嬢方に蕩けるような笑顔を向けていたし。人を骨抜きにするような声音を出して、無駄にキラキラしたオーラを纏っていたんだもの。正直言って、同一人物とはとても思えない。