あの暗い異空間の中、わたしは決して一人ではなかった。

 殿下の言葉があったから、わたしは強くなれた。
 こうして魔力を解放すること、本当の自分に戻ることを決意できたのは、殿下がいたからだ。


 遠くの方でゴーン、ゴーーンと鐘の音が鳴り響く。それは、後夜祭の始まり――――オースティン達の企みが失敗に終わったことを意味していた。


「行くぞ、ザラ」


 警備の人間にオースティン達を引き渡しつつ、殿下は満面の笑みを浮かべる。


「はい」


 ようやくわたしは新しい――――ザラ・ポートマンとしての自分の人生を歩み始めようとしていた。