「そんなこと、わたしがさせない」

「……なに?」


 わたしは目を瞑り、遠い昔に唱えた呪文を反転した。
 少しずつ、少しずつ、身のうちに秘めた魔力が湧き上がってくる。身体が熱く、燃えるような感覚が襲い掛かる。


「なっ……なんだ?」


 ゴゴゴゴ、と音を立てて地面が揺れ、オースティン達が声を上げる。
 次の瞬間、わたし達がいた異空間は無惨に壊れ、校庭の隅に瓦礫と共に押し出されていた。


(痛っ……)


 自分で放った魔法だというのに、思いのほか勢いが強かった。身体がズキズキ痛むし、服も砂埃に塗れている。


(まぁ、魔力を開放するのは久しぶりだし)


 こんなものか、と思いつつ、わたしはゆっくりと身を起こす。傍らでオースティンが呆然とこちらを見上げていて、わたしは大きく鼻を鳴らした。


「ザラ……おまえっ…………!」

「わたし、前世の業が深かったせいなのかな……実は魔力がめちゃくちゃ強くてね」


 激痛に喘ぐ魔法使いたちを捕縛し、わたしは笑う。

 オースティンが驚いているのはそれだけじゃない。

 わたしは今、ずっと隠していた本当の自分に戻っていた。国を傾けると謳われた美貌(と自分で言うのはむず痒いけど)は、『敗北』を自覚させるに十分な力を持っているようで。
 オースティンは真っ青な顔をしてブルブルと震えている。