「良かった、安心したよ。ザラも殿下に感化されてるんじゃないかなぁって心配してたんだけど、杞憂だったね」


 オースティンはそう言って穏やかに微笑む。


(ん? 何を心配することがあるのだろう?)


 そんなことを考えながら、わたしはそっと首を傾げる。
 オースティンはわたしに対して恋情を抱いている様子はなかったし、ただの気の合う幼馴染だ。

 わたし自身はオースティンに対して、『平凡な結婚ができる相手ナンバーワン』ぐらいの認識は抱いていたものの、何故だか今は、そこに何の魅力も感じない。


 だけど変なの。
 オースティンだって、わたしが生徒会に入ることが決まった時、将来に繋がるだなんだと喜んでくれた筈なのに。

 そんなわたしの疑問が伝わったのか、オースティンは小さく首を傾げた。