「嘘吐くな! おまえだって、少しぐらいは俺のこと――――」

「わたしは……わたしはもう二度と、あんな想いをしたくないんです! わたしのせいで人が死んで、わたしのせいで土地が、自然が、色んなものが踏み荒らされて! ごめんなさい、ごめんなさいって! 何度叫んでも誰にも届かなくて! 火炙りになったところで誰も許してくれなくて! 全部わたしのせいで――――」

「ザラは何も悪くない」


 殿下の言葉にわたしは思わず顔を上げる。彼の青い瞳は淀みなく澄んでいて、心が大きく揺さぶられた。


「悪いのはおまえじゃなくて、おまえを幸せにできなかったバカ男共だろ?」


 殿下はそう言って、いつの間にか零れ落ちたわたしの涙をそっと拭った。涙で曇ってしまったわたしの眼鏡を外しながら、殿下は眉間に皺を寄せる。


「おまえは確かに、国が荒れるキッカケを作ったのかもしれない。避けられなかったのか……そう考えてしまう気持ちも分かる。
だけど、悪いのは全部おまえじゃない。おまえの声を聞かなかった、おまえを守ろうとしなかった皇族だ。おまえを利用して戦を仕掛けた官僚どもだ。
生まれ変わってまで背負うようなこと、おまえは何もしていないだろう?」