実際、わたしの前世は皇族に振り回されたようなものだ。

 皇弟に嫁いだはずのわたしが、ある日皇帝に見初められたことが、全てのキッカケで。

 一妃が皇帝の求めを退けるはずはない。逆らえば容赦なく首が飛ぶし、その被害は親類にも及ぶ。
 だからわたしは自分をただの無機物だと思いこんだ。
 何も考えないよう意思を殺し、流れに身を任せた。


 けれど、そのことが夫の――――皇弟の怒りを呼んだ。妃を横取りされた上、わたし自身が皇帝を選んだように見えたらしい。それが彼のプライドを酷く傷つけたのだと、気づいた時にはもう遅かった。

 元々皇帝に不満を持っていた官僚たちが皇弟を焚きつけ、戦争が起こった。止めようと手を尽くしたこと全てが裏目に出てしまい、わたしは絶望した。

 あんな想いはもう二度としたくない。そっと胸を押さえつつ、わたしは静かに目を伏せた。