「わたしは、本当の殿下も魅力的だと思いますけど」


 口を衝いて出た言葉に、自分でも驚く。多分これは、わたしの紛れもない本心だ。殿下のことをそんな風に思っているなんて、知らなかった。


(何言ってるんだろ、わたし)


 唐突にものすごく恥ずかしくなって、身体がすんごく熱くなって、思わず殿下から顔を逸らす。
 『やっぱ今の無し!』って言いたい所だけど、さっきのセリフには嘘偽りは一つもない。はぐらかすことも、否定することもできないまま、わたしは一人、ドキドキと心臓を高鳴らせる。

 殿下はわたしの手をそっと握った。温かくて大きくて、ゴツゴツした手のひらに、心臓が小さく高鳴る。外側から見たら造り物みたいに綺麗で完璧なのに、実は内側に握りだこがあるところとか、殿下自身にそっくりだ。
 彼の内側に触れてしまった―――――そんな風に思えてきて、何だか心がゾワゾワする。


「――――ありがとな」


 殿下はそう言って、わたしの手のひらに口づけた。
 心臓が馬鹿になったみたいに早く鳴り響く。だけど、自分を偽るのは得意だもの。何てことない振りをしながら、わたしは静かにため息を吐いた。