わたしには前世の記憶がある。


「ザラ、今帰り?」


 振り向けば、そこには幼馴染で同じ魔術科に通っているオースティンがいた。
 良心の塊みたいな優しい男で、平均的な顔立ち。一緒にいるとすごく落ち着く人間だ。


「ううん、今日から生徒会だから」


 わたしが転生したこの世界では、魔力を持つ人間は丁重に扱われる。幼くして給金が与えられる他、国から色んな特権を与えられる。
 だけど、その代わりに将来は国のために働くことが決まっている。わたしたちがこの学園に通っているのも、国からの要請だ。

 そんなわけで、生徒会なんてただ面倒なだけの集まりだけど、指名されたからには役目を果たさなければならない。ため息を一つ、わたしは首を横に振った。


「あぁ、ザラは優秀だもんね。先生に目を付けられちゃったんだ」

「……どこが? 至って平凡だと思うけど」


 言い返しながら、ついつい眉間に皺が寄る。『優秀』なんて、わたしの人生には無用の長物。寧ろ忌避すべき単語だ。

 学園でのわたしは、筆記も実技も成績は中の中を保ってきた。積極的でも消極的でもない、至って普通の魔女だった。優秀だと判断される要素は1ミリだってなかったはずなのに。