お腹すいたし、早くここから去ろう。
いつもランチタイムを過ごしている非常階段に向かおうとした、その時。
「ごめんね。俺、有栖さんに案内してもらう約束したから」
「………は?」
椿くんが突拍子もないことを言い出して、思わず驚きの声が小さく漏れた。
「いや、私そんなの知らな……」
「有栖さん、昼休みが終わる前に早く行こう。じゃあみんな、またあとで」
「え、ちょっ…!?」
私の声を無視して手首を掴んできた椿くんは、颯爽と教室から出ていった。
後ろを振り返ると、女子たちはポカンと立ち尽くしている。
一昨日と言い今日といい…なんでこんな目にあってばっかりなの?
椿くんに引っ張られる私は、自分に降りかかる災難を嘆くことしかできなかった。
***
「君…昨日、逆ナンしてきた子だよね?なんでそんなに地味なカッコしてるの?」
私の後ろには、冷たいコンクリート。
すぐ上にある端正な顔立ち。