「一花が危険な組織に誘拐されたのは、全部お前のせいだ!!お前が俺たちの前に姿を見せなかったら、一花は誘拐されることなんてなかったんだ!!一花にもしものことがあってみろ!!その時は俺がお前のことをぶっ殺してやる!!」

そうヨハンは怒鳴り付けた後、部屋を勢いよく出て行く。アルフレッドとオリバー、そしてナタリアがその後ろ姿を見て「ヨハン!!」と言いながら後を追って飛び出し、部屋には再び沈黙がしばらく流れた。

誰も話さない中、桜士は紙を開く。そこにはただ一つの文字が書かれていた。

「くれ」

その言葉が何を意味するのか、今の桜士の心では考えることができず、ただ悔しさだけが胸にあった。



「うっ……」

一花が目を覚ますと、目の前に広がっていたのは暗闇だった。空気がどこか冷たく、一花は体を震わせる。その時、一花は自分の体が自由に動かせないことに気付いた。

一花は椅子に座らされた状態のまま、拘束されていた。手は肘掛けに縄で縛り付けられ、足も椅子の脚の部分に手錠のようなもので縛り付けられている。腰も動かさないよう縄が何重にも巻かれており、動くことはできない。