「つむぎちゃん! ダンス王子と、さわやか王子のふたりから誘われてるけど、どっちにするの?」


 佐々木さんが、ペンケースをマイクに見立てて、芸能リポーターみたいにたずねてきた。


「ええっ!? どっちって言われても……」


 教室に残っている女子も男子も、みんな興味しんしんで、わたしの答えを待っている。

 数えきれないほどの瞳が、わたしを見つめている状況に、くらくらとめまいがした。

 どちらかを選ぶなんてできないよ!

 ええい、こうなったら!


「わたし、望月くんの応援に行くよ」

「やりぃ!」


 ガッツポーズする望月くん。


「くっ……」


 対照的に、がっくりと肩を落とした岸くんは、ふらふら~っと教室を出ていこうとした。


「――岸くんもいっしょに応援しない?」


 わたしの一言で、岸くんの動きが止まる。


「えっ……」


 ふり返った岸くんの表情に、とまどいの色が浮かんでいる。


「お礼してくれるんでしょ? わたし、サッカーのこと、よく知らないの。隣で解説してもらえると助かるかなって……」


 我ながら大胆なコト言ってると思うけど、わたしのせいでふたりがギスギスするのは、これ以上、見たくないもん。

 仲直りのキッカケをつくれたらって……。

 ふたりは幼なじみなんだから。