女の人は、うるんだ瞳で、わたしの腕をつかんだ。


「わ、わかりました。落ち着いてください」

「生きのびた黒魔女を倒そうというウィッチハンターが、今の世にもいるのよ。あたしは、やつらに追われているの。魔力切れの苦痛をやわらげるために黒猫に変身して、この神社に隠れていたら、野良猫たちに目をつけられてね。あなたのおかげで助かったわ」

「はあ……」

「あたしの名前は、霊仙(りょうせん)マヤ。あなたは?」


 わたしはためらいつつも教えた。


「吉丸つむぎです」

「つむぎ……。いい名前ね」


 マヤはニコッとほほ笑んで、手をのばしてきた。


「つむぎ、手を出して」


 言われるまま、手を出すと。

 マヤは、わたしの手のひらに、黒い石を落とした。


「受け取ってくれるかしら?」

「これは……?」

「助けてくれたお礼よ。あたしが魔法をかけてあるから、その石に願いごとをするといいわ。きっとかなえてくれるから……」

「ええっ……」


 黒い石は、森の木漏れ日を反射して、ぎらぎらと輝いている。

 なんだか胸がざわついて、受け取ってもいいものか、迷っていたら。


「大切に持っていてね」


 マヤは、ひんやりと冷たい両手でわたしの手を包み、黒い石を握りこませた。


「はい……」


 とまどいつつうなずくと、マヤはよろよろと立ちあがった。