「そろそろ昼休みも終わるし、もう行こうか」


 マロンをもう一度なでてから、うさぎたちにバイバイした。

 小屋を出て、しっかりと扉にカギをかける。

 すると、ちょうど昼休み終了をつげるチャイムが鳴った。


「神谷くん……じゃなかった、怜音くん。急ごう」


 うん、「くん」づけなら、べつにヘンじゃないよね。

 走りだそうとしたとき、左手を怜音くんの小さな手につかまれた。


「あっ……ごめんなさい」


 あやまりつつも、怜音くんはぐっとわたしの手を握ったまま、はなそうとはしない。


「あの……さっき吉丸センパイにお礼するって言ったじゃないですか。今日の放課後、あいてますか?」


 ええええええええっ!

 それって、お礼を口実(こうじつ)にしたデートのお誘いなんじゃ……?

 怜音くんは、魅了の魔眼の暗示が強めにかかっている気がする。


「今日はちょっと……。園芸部のあつまりがあって……」

「そうですか。じゃあ、明日は?」

「あいてるけど……」

「決まりですね!」


 満面の笑みになる怜音くん。