「えっ……?」

「兄さんは、ぼくの憧れです。それは確かです。でも、兄さんは偉大すぎる。スターみたいにキラキラしてて、華がある。才能のかたまりみたいなひとだ。ぼくは兄さんみたいにはなれっこないのに、どうしても比べられて……」

「神谷くん……」

「神谷兄弟はすごいねって言われるけど、みんなは兄さんのほうを見てる」

「そんなことないよ! 神谷くんカッコいいし、頭いいし、話してたら心がなごむし!」


 あっ……必死にフォローしてしまった。

 でも、そんなに自分を卑下(ひげ)しないでほしいな。

 わたしが男の子だったら、神谷くんのことをうらやましく思ってるはずだし。

 だけど……自分よりすごいと感じる兄弟がいたら……?

 きっとフクザツだよね。


「ありがとうございます。吉丸センパイ」


 そう言って、花が咲いたような笑顔になる神谷くん。

 元気だしてくれたのかな? と思ってホッとしていたら。


「でも……ぼくのこと、怜音ってよんでくださいね」


 心なしか、神谷くんの頬が赤い。


「う、うん……」


 うなずいてしまったけれど、いくら年下でも、よびすてにするのは厳しいなぁ。