「二年の吉丸センパイだよ。マロンをつかまえてくれたんだよー」


 神谷くんはうれしそうに話すけれど、女の子たちの視線が痛い。


「じゃあ、この子はあたしが戻すから、センパイはもういいですよ」


 三人のうち、一番気の強そうな子が、わたしが抱いているマロンに手をのばした。


「えっ……ちょっと……」


 ふいにさわられて、マロンがイヤそうにからだをよじる。

 それでも、女の子は無理やり抱こうとした。


「イヤがってるから……」


 わたしは、女の子にぐっと顔を近づけようとした。

 魅了の魔眼を使って、言うことをきかせるしかないっ!

 マロンにこれ以上、ストレスを与えられないよ!

 すると――。


「マロンにさわらないでほしいな」


 おだやかだけれど、有無を言わせない調子で、神谷くんが言いはなった。


「え……?」


 女の子たちの動きが止まる。


「マロンは人見知りだからね。吉丸センパイには慣れてるから、このままぼくたちで行くよ。ごめんね」


 神谷くんが眉を下げてあやまると、女の子たちは口々に、

「いいのよ!」

「慣れてる人がやったほうがいいもんね」

「そうね。センパイにおまかせします」

 と言って、あっさり引き下がった。