「吉丸センパイにお礼しなくちゃですね」

「ええっ! そんなの気にしなくていいよ!」

「いや、ぼく、もう決めました。何かおごりますよ」


 人なつっこい笑顔を向けて、神谷くんがとんでもないことを言いだした。

 すっごくグイグイくるよ!

 やっぱり、あのとき魅了の魔眼が発動していたみたい。

 岸くん、望月くんに続いて、年下の神谷くんまで暗示にかけてしまった……。


「あー、怜音くんだ!」

「ホントだぁ」

「怜音くん、何してるの~?」


 一年生の女子が三人、黄色い声をあげながら、神谷くんに駆けよってきた。

 さすがイケメン王子、女の子にモテモテだね。


「あれ? うさぎ、どうしたの?」

「ああ、ぼく、飼育委員の当番だったんだけど、ミスってマロンとおもちを逃がしちゃったんだよ。なんとかつかまえて、今から小屋に戻すところだよ」


 神谷くんが説明すると、女の子たちは、わたしをじろりと見やった。


「この人は……?」


 うぅ、いぶかしげな表情から、この子たちの心の内が読めてしまう。


 ――なんでこんなイケてない子と、うちらのアイドルの怜音くんがいっしょにいるの?


 ぜったい、そう思ってる。