「あっ……わたし、去年、飼育委員やってたから……。今もちょくちょく小屋に様子を見にいってるし……」

「そうだったんですか! どうりでリラックスしてるワケだ……」


 神谷くんは笑顔をかがやかせて、抱いているおもちをマロンに近づけた。

 この二匹は、とっても仲よし。

 うれしそうに鼻キスしたのがかわいらしくて、わたしと神谷くんは顔を見あわせて笑った。

 おもちとマロンの大脱走劇は、これにて終了!



     * * *



「早く小屋に帰してあげなきゃね」


 わたしと神谷くんは、それぞれマロンとおもちを抱いて、小屋に向かって歩いていた。


「すみません、センパイ。ご迷惑をおかけしてしまって……」

「ううん、いいよ。この子たちと久しぶりにふれあえてうれしいし……」

「……えっと、ぼくは一年B組の神谷怜音といいます」


 はにかみながら自己紹介する神谷くん。

 知ってたけどね。


「わたしは二年A組の吉丸つむぎ」

「吉丸……つむぎセンパイ……」


 神谷くんは、わたしの名前をうれしそうにつぶやいた。

 普通だったら、学年が違って、さらにイケメン王子である神谷くんと、こうして会話することなんてなかったはず。

 マロンとおもちのおかげ……かな。