わたしの動揺を見て、女の人は「うふふ」と笑った。


「いきなりヘンなことを言って、ごめんなさいね。でも、あたしは本当に魔女……うぅ」


 女の人が苦しそうな声を出したので、わたしはしゃがみこんで、

「大丈夫ですか!? どこかケガを……?」

 と、女の人の顔をのぞきこんだ。

 その美しい顔に、思わず見とれてしまう。


「いえ、大丈夫よ。ケガではないの。魔力切れをおこしているのよ。全身に痛みが走って、こうして動けなくなる」

「魔力切れ……?」

「この三日間、あたしはウィッチハンターと戦っては逃げ、戦っては逃げ……をくり返していたのよ。この長閑市にたどり着いたとき、魔力切れを起こしてしまって……」

「えっと……ウィッチ……ハンター……?」


 わたしの頭のなかは「?」で埋めつくされている。


「大昔、ヨーロッパやアメリカで【魔女狩り】が行われたことは知っているかしら?」

「ええ、知ってますけど……」


 こくりと、うなずくわたし。


「魔女とは無関係の人がたくさん処刑されてしまったことで有名だけれど、人に(あだ)なす黒き魔女――いわゆる黒魔女も処刑されたわ。でも、命からがら、逃げた黒魔女もいたのよ。なかには、日本に逃げのびた黒魔女も……」

「日本に……ですか!?」

「あたしはその末裔(まつえい)。だけど、悪さはしないわ。魔力を持っているだけなの。信じて!」