「マロン! ここにいたのか!」


 息を切らしながら走ってきたのは――。

 小柄で、とっても愛らしい顔をした美少年。

 腕には、白いうさぎを大事そうに抱えている。

 こっちは、おもちだ。


「おもちじゃないの! どうして……?」


 おどろいたわたしに、美少年が深々と頭を下げた。


「ごめんなさい!」


 サラサラの髪がゆれる。

 わたし、この男の子を知ってる。

 一年生の神谷(かみや)怜音(れおん)くんだ!


「ぼく、飼育委員で、えさやり当番なんですけど……小屋に入ったとき、扉をしっかり閉めてなかったみたいで……。いつのまにか、マロンとおもちが出ちゃってたんです。おもちはすぐ見つかったんですけど、マロンが見あたらなくて、探しまわってて……」


 神谷くんは相当あせっていたみたい。

 走りまわったのか汗をかいているし、()んだ瞳にはじんわり涙が浮かんでいる。


「こっちに来ていたんですね。見つかってよかったです!」


 神谷くんはほっと表情をゆるめた。

 わたしがなぜ一年生の神谷くんを知っているかというと……。