……でも、賢ちゃんはぜんぶお見通しだ。

 最初は、魅了の魔眼の力がこわかったけれど、次第に慣れてきた自分がいる。

 みんなを暗示にかけてしまったことへの罪悪感も薄れてきた気がする。


「……このままじゃいけないって、思ってるよ……」


 うなだれながら言うと、賢ちゃんはため息をついた。


「魔眼の力といっても、その効果が永遠に続くとは思えない。しょせんは暗示だよ。いつか、とける日がきっとくる。本気で恋するなよ」


 そのとき、傷つくのはわたし。

 賢ちゃんの忠告はもっともだ。


「わかってるよ……」

「まあ、ぼくにまかせておけって。近いうちに解決法を見つけてみせるから。さっ、帰った、帰った」


 また机に向かう賢ちゃん。

 わたしは、しぶしぶ立ちあがって言った。


「ホントに無理しないでね。顔色悪いから、ちゃんとご飯食べて、睡眠もとってね」


 賢ちゃんは返事する代わりに、「心配すんな」とばかりに手をあげた。



     * * *



 次の日の昼休み――。

 園芸部の水やり当番の日だ。

 中庭にある花壇に、わたしはひとりで来ていた。


「やっぱり落ち着くなぁ」


 ここは、わたしの(いこ)いの場所――秘密の花園だ。