「……おれの話って、どんなことを話してたんだ?」


 じとーっとした目つきで、わたしを見やる岸くん。


「ええっ、ホントにヘンな話はしてないよ? ふたりが幼なじみだって教えてもらっただけで……」


 あわててわたしが言うと、岸くんはかすかに笑った。


「おれがサッカーやってたことも聞いたか?」

「うん……」


 岸くんは、窓ぎわに行って、窓の外を見つめながら口をひらいた。


「……おれ、サッカーの才能ないんだよ。葵にはぜったい追いつけない。それが小学生の間にわかってしまったんだよな。中学受験が終わったあと、ダンスの動画を見てたらハマっちまってさ。これだと思った。おれが情熱を燃やすべきはダンスだって……」

「岸くん……」


 岸くんはふり返って、さびしそうに笑った。


「アイツ、俺がサッカーから逃げたと思ってるんだよ。裏切られたって感じてるんだろうな」


 わたしは首を横にふった。


「ううん、望月くんは岸くんのダンスの才能を認めてるよ? 動画、凄いって言ってたもん!」

「何だよ、アイツ見てんのかよ」


 前髪をかきあげて、照れくさそうにする岸くん。


「いっしょにサッカーできなくなって、さびしいだけなんだよ、きっと……」