「うるせえ!」


 岸くんは、ドンッ! と望月くんのからだを押して、室内に飛びこんでくると。


「つむぎ! 大丈夫か!? 何もされなかったか!?」


 駆けよってきて、わたしの肩をゆらした。


「はわわ。だ、大丈夫だよ。座って、話してただけだから……」


 望月くんとキスしそうになったことはだまっていよう。

 さらなる修羅場になりそうだもん。


「そっか……」


 安心したのか、大きく息を吐きだす岸くん。


「ったく、せっかくおれのアピールタイムなのに、邪魔してくれたよな。……まっ、なぜか湊斗の話ばっかしてたけどな」


 望月くんがにやりとすると、岸くんは眉をしかめた。


「はあ? 何を話してたんだよ?」

「ダンスうまいよなって……」

「ウソつけ! ヘンなことを吹きこんでたろ!?」


 岸くんが声を荒げると、望月くんは肩をすくめて、

「そろそろ練習に戻らないと、監督にどやされるからな。おまえもダンス部をぬけてきたんだろ? 工藤さんに怒られるぞ?」

「うっ……」

「吉丸さん、またね」

 わたしに手をふって、望月くんは出ていった。