わたしは岸くんに恋してしまったんだろうか?

 岸くんに言われたことが頭によみがえらなければ、わたしはきっと、望月くんとキスを……。

 でも、わたしは好きになっちゃいけない。

 岸くんのことも。望月くんのことも。

 たとえ両想いになったって、そんなの反則だから。


「……よく、わからないの」


 ようやくしぼりだした答えが、これだった。

 そのとき、戸の()りガラスに人影がうつって。

 戸をあけようとして、カギがかかっているとわかると、ドンドン! と激しくノックしてきた。


「おーい、人さらい! 望月葵! 無駄な抵抗はやめて、おれのつむぎを解放しろ!」


 岸くんの声だった。


「ちぇっ。邪魔が入ったよ」


 望月くんが、ため息まじりに立ちあがる。


「中から声が聞こえたからな。いるのはわかってるぞ!」

「わかったから待てよ」


 望月くんがカギをあけると、すぐさま戸がガラッ! とあいて。

 岸くんが仁王立ちしていた。


「吉丸さんは、いつからおまえのものになったんだ?」


 まったく動じてない望月くんが、とがめる口調で言った。