沈黙が流れ、入れかわるようにして、外から音が流れこむ。

 グラウンドで練習しているサッカー部のかけ声が室内に響いて、さらに吹奏楽部の練習の音がまじった。


「……あのときね、自分のことがイヤになって泣いてたの。自己嫌悪の涙――。ホント、わたしってイヤな子だから……」


 沈黙に耐えかねて、わたしはやぶれかぶれになって言った。


「イヤな子……? ぜったい、そんなことないよ。ホントにイヤな子だったらさ、そんなふうに自分のことで悩んだりしないと思うんだよね」


 望月くんのやさしさが、今はつらい。

 だってわたしは、魔眼の力で、みんなの心を操っているんだもの。

 このやさしさも、きっと……。

 鼻の奥がつーんとして、瞳に、じんわりと涙がにじむ。

 やがて涙は、頬をつたった。


「泣かないでよ」


 望月くんは腕をのばして、わたしの頬に手をそえた。

 そして、指で涙をぬぐって――。


「やったね。有言実行ってやつ」


 望月くんはニッと笑って、白い歯を見せた。

 太陽みたいな、まばゆい笑顔だ。