「吉丸さんの話をしようよ。おれ、もっと吉丸さんのこと知りたいんだ」

「ええっ。わたしの話なんて、つまんないよ?」

「そんなことないさ。……このあいだ、長閑中央駅で会ったとき、泣いてたよね? 吉丸さんの表情を見て、おれ、胸が苦しくなったんだよね。守ってあげなきゃって……」

「望月くん……」


 その感情が、魔眼による暗示なんかじゃなくて、本当に心の奥底から()きあがったものだったらよかったのに……。

 だけど、そんなことはありえない。

 わたしを好きになってくれた、その感情はニセモノなんだ。


「――あのとき、どうして泣いてたの?」

「えっ……?」


 言葉につまったわたしを見て、望月くんの眉が下がる。


「ごめん! そんなこと、ひとに教えたくないよね。おれ、デリカシーないんだよなぁ。姉ちゃんにもよく言われるんだ」


 望月くんが頭をかいてしどろもどろになったから、わたしは、ふふっと笑った。


「望月くん、お姉ちゃんいるんだ?」

「うん、二つ上、高一だよ。これが口うるさくてさぁ」


 賢ちゃんと同い年だ。


「わたしはひとりっ子だから、そういうのうらやましいな。まあ、イトコのお兄ちゃんが近所に住んでて、ホントのお兄ちゃんみたいなんだけどね」

「へえ、そういうのいいね」

 しばらく雑談したけれど、ふと会話がとぎれた。