「……でも、岸くん、ダンスを真剣にやってると思うよ。本気で打ちこみたいものが変わることって、よくあるし……」


 わたしは、この目で真近で見た。

 ダンス王子の、心が弾んでくる素晴らしいダンスを。

 そして何より、ダンスに対して真剣な姿を――。


「うん、それはわかってる。アイツの動画見てるけど、凄いもんな。くやしいことに……」


 そう言って、望月くんは肩をすくめた。

 疎遠になってる、とはいっても、やっぱり幼なじみなんだね。

 ちょっとホッとした。

 ふたりには仲よくしてほしいけれど……。

 わたしをめぐって争っているような状況だから、わたしが新たな火種(ひだね)を生んでしまっているんだ。

 そう思ったら、ズーンと落ちこんできた。


「吉丸さん、どうしたの?」


 小首をかしげる望月くん。


「ううん、なんでもないよ」


 わたしは、取りつくろうように笑顔をつくった。


「ってか、湊斗の話なんかどうでもいいよ」


 望月くんは長い脚を投げだして、ぶらぶらさせた。

 小さな子どもみたいで、ちょっとかわいい。