「ふざけんなよ、葵!」


 岸くんは声を荒げると、わたしの肩を抱いてきた。


「つむぎ、こんなやつの言うこと、無視していいからな」

「えっと……」


 そう言われましても……。


「吉丸さんに気安くさわるなよ! やっぱりウワサは本当だったんだな。おまえが吉丸さんを狙ってるって……」

「だったら何だよ? おまえに関係ねぇだろ」

「ある! 吉丸さんは、おれの大切な女の子だ」

「なっ……!?」


 望月くんが、あまりにまっすぐな瞳で言いきったから、岸くんは固まってしまった。

 それ以上に困惑したのは、わたしだ。

 ど、どうしよう!?

 学園の四人のイケメン王子のうち、ふたりがわたしを取りあってるような状況――。

 わたしなんかのことで、ふたりがいがみあう必要なんてない。

 そうさせているのは、もちろんわたしの魅了の魔眼のせいなんだけど……。

 正直、罪悪感よりも、ドキドキのほうが勝ってるよ。

 こんなシチュエーション、わたしにはぜったい縁がないと思っていたんだもの。