そして、五匹の野良猫が、黒猫をとり囲んで、「シャーッ!」と威嚇(いかく)していた。

 寄ってたかって、黒猫をいじめてるみたい。


「こらっ!」


 わたしが声を出すと、五匹の野良猫はビクッとしてこちらを見たけれど、動く気配がない。


「あっち行って! 行きなさい!」


 足を踏み鳴らして声を荒げると、五匹の野良猫たちはようやく逃げていった。

 わたしはほっと息をついて、しゃがみこむ。

 黒猫は警戒しているそぶりを見せるものの、逃げようとはしない。

 ケガしてるのかも?

 わたしは思いきって手をのばして、頭をなでた。

 黒猫は動かず、なでられるままになっているので、わたしは全身をチェックした。

 どうやらメスらしいけれど、傷などは見当たらない。


「よかったぁ。ケガはしてないみたいね。よかったね、黒猫ちゃん」


 あごの下をなでながら、やさしく話しかける。


「ありがとう。あなた、やさしいのね」

「えへへ。それほどでも……。ん…………?」


 今、黒猫がしゃべったような気がするんだけど……。

 あはは。まさかね。


「あたし、やさしい女の子は大好きよ」

「へ…………?」


 やっぱり、しゃべった――――っ!?

 ぼわん!

 いきなり黒猫が白い煙に包まれた。

 な、な、なんなの、一体!?