岸くんはやさしくほほ笑んで、

「『ありがとう』だけもらっておくよ。つむぎがあやまることなんてない」

 って言ってくれた。

 心苦しさを覆いかくすように、胸が高鳴る。

 わたしは平静をよそおってたずねた。


「あのあと、早野くんとは大丈夫だったの? ケンカみたいになってたけど……」

「ああ、あんなのケンカのうちに入らね―から。早野が悪いんだよ。アイツにはぜったい、つむぎにあやまらせるからな」

「えっ、いいよ! わたしは大丈夫だから!」


 あわてて手をふるわたし。

 すると、岸くんは何か思いだしたようで、

「そうだ!」

 と、スマホを取りだした。


「あのダンス動画なんだけどさ、本番の動画を撮ったんだよ」


 花壇をバックに、岸くんがキレのいいダンスをしている動画を見せてくれた。


「カッコいい……」


 自然と声がもれる。


「サンキュ」


 照れたように頬をかく岸くんがかわいい。


「でもよ、何か足りね―んだよな」

「えっ? 足りないって……?」

「……つむぎ」

「ええっ!? わたし!?」


 びっくりして、自分を指さしたまま固まってしまった。