「岸くんからどうぞ」

「マジで悪かったよ。早野たちが好き勝手言いやがるからさ、頭に血がのぼったんだよ。冗談じゃねーよ、つむぎは渡さねえって……。おれ、つむぎに本気で惚れたんだ。……でも、おまえのキモチ考えずに強引だったよな。ごめんな」


 岸くんが眉を下げたのを見て、後ろめたさで胸がズキズキと痛んだ。

 あやまらないで!

 すべては、魅了の魔眼のせい。

 でも、そんなことをいきなり説明したって、納得するのは賢ちゃんくらいのもの。


「大丈夫だよ。わたし、怒ってるわけじゃないから」

「ホントか!? よかったあ」


 岸くんは、ふうっと大きく息をついて、自分の腕におでこをつけた。

 そして、ちらりとわたしを見やって。



「嫌われたワケじゃないんだな。おれ、マジあせってたんだからな」



 やさしくて、いとおしむような瞳だった。

 岸くんは本気だ。

 だけど、それは魔法がつくりだした、まやかしのキモチで――。

 ぎゅうっと胸がしめつけられる。


「つむぎもおれに話したいことあるんじゃ?」

「えっと……わたしは感謝を伝えたかったんだ。早野くんがほら、あんな感じだったから、岸くんが助けてくれて、うれしかったの。ありがとう」

「つむぎ……」

「ホントはもっと早くお礼を言いたかったけど、なんだか照れくさくて……。ごめんね」