たしかに、わたしは岸くんをさけていた。

 廊下や校庭で見かけるたび、逃げていたし。


「……この前、おれがあんなことを言ったからか? 気を悪くしたならあやまるよ」


 あやまらなくちゃいけないのは、わたし。

 魅了の魔眼で暗示にかからなければ、岸くんはみんなの前であんなことは言わなかった。

 それなのに胸がときめいてしまった自分もいて。

 わたしは本当に罰当たりだ。

 そのことが心苦しくて、申し訳なくて、わたしはずっと岸くんをさけていたんだ。


「――でも、冗談で言ったワケじゃないんだぜ? おれは本気でつむぎのこと……」

「あのっ! わたし今、図書委員の仕事中だから!」


 自分でもびっくりするくらい大きな声を出してしまった。


「あっ……」


 あわてて口をおさえる。

 みんながこちらに注目していた。

 佐々木さんはにんまりしているし、岩田くんは苦虫をつぶしたような顔で見ている。


「ちょっとだけでも話せないか?」


 なおも岸くんが食い下がると。


「つむぎちゃん。あたしが代わるから、ふたりで話してきたら?」


 佐々木さんが気をつかって申し出てくれた。