暗示にかかっている子は、わたしに好意を持っているから、嫌われたくない気持ちが働くらしく。

 強気の態度で接すると、意外とすんなり言うことを聞いてくれることに気づいたんだ。

 おかげで、わたしのキャラが変わったと思われているはず。

 賢ちゃんと接しているときの“素”が出るようになっただけなんだけど。

 そういえば、賢ちゃんからは何の連絡もない。

 魔石を取りだす方法はまだ見つからないのかな?


「これ借りるよ」


 物思いにふけっていたら、スッと本を差しだされた。


「はい。図書カードをお願いします……って!?」

「よう」


 岸くんだ!

 相変わらずのクールな表情で、わたしを見おろしている。

 みんなが気づいて図書室がざわめいたけれど、岸くんは気にする様子がない。


「ちょっと話せないか?」

「仕事中だから……。では、二週間以内に返却してください」


 ドギマギしつつ、淡々と貸し出しの手続きをすませる。

 本を受けとっても、岸くんは動かなかった。


「つむぎ、なんでおれをさけるんだ?」

「さけてないよ」

「そうか?」


 疑わしげな目線を向けてくる岸くん。