「…………」


 どう返していいかわからなくて。

 わたしは、ほほ笑んでいる望月くんの顔を見つめることしかできない。

 そうこうしていると、電車が止まった。


「あっ、おれ降りなきゃ。じゃあ、吉丸さん、また明日ね」

「う、うん。また明日……」


 降りる人が多い駅で、望月くんはたくさんの乗客とともに降りていった。

 一気に車内が空いて、どこかほっとした空気が流れる。

 ガラガラになったのに、わたしはドアを背にして突っ立ったまま。

 ヤバいよ! 気をつけていたのに、魅了の魔眼が発動しちゃった!

 望月くんがささやいたあの言葉――暗示にかかっていなければ、出てくるはずもない。

 またひとり、わたしは心をあやつってしまったんだ。

 罪悪感で、ちくりと胸が痛む。

 だけど、胸がときめいてしまった自分がいるのも確かで……。

 かーっと顔が熱い。

 きっと真っ赤だね。

 それにしても……。

 目まぐるしい一日だった。

 佐々木さんたちに魅了の魔眼を使って、クラスの人気者になって、最初のうちは気分がよかった。