彼の両手はわたしの肩にそえられ、その左手首には色あざやかな糸で編みこまれたミサンガが巻かれていた。

 わたしは身じろぎもしないで、じっとミサンガを見つめて。

 あれ……? なんだろう?

 とっても心がフワフワする、この感じ――。


「吉丸さん」

「え……?」


 すっかり油断していた。

 ふいに声をかけられ、わたしは見あげてしまった。

 わたしの顔をのぞきこんでいた望月くんと目が合う。

 しまった!

 目をそらそうと思ったけれど。

 望月くんの大きな瞳は、こちらの心まで温かく包みこむようなやさしさに満ちていて。


「吉丸さんの目、赤いね」

「う、うん。最近、ちょっと寝不足で……」


 うすく笑ってごまかす。


「……さっき、ホームで泣いてたよね?」


 どきりとした。

 望月くん、気づいてたんだ?


「えっと……大丈夫だよ、うん。大したことはなくて……」


 動揺して、うまく話せない。

 すると、望月くんはわたしの右耳に顔を寄せて――。



「おれ、きみの涙をぬぐえる男になりたいよ」



 望月くんのささやきが、わたしの髪を通りぬけ、たしかに耳に届いた。