電車が来たけれど、割と混みあう時間帯で。

 乗客に押し流されるように、わたしたちは反対側のドアに肩をくっつけて、向かいあう形になった。

 わわっ! 至近距離!

 だけど、混みあってる車内では離れようがない。

 電車が動きだすと、ガクッと車両がゆれて、わたしはバランスをくずした。


「きゃっ!」

「おっと」

 すかさず望月くんが抱きとめてくれて。


「ご、ごめんね……」

「いいよ。このまま、からだ預けてよ。支えるからさ」


 きゃああああああああ!

 こ、こ、この状況は…………!?

 不可抗力とはいえ、望月くんと抱きあってるような体勢になってしまった。

 背が高い望月くんだから、わたしはその胸に顔をうずめて……。

 至近距離を通りこして、わたしたちの間隔は、ゼロ距離だよ!

 目を合わせる心配はないけれど……。

 ドキン。ドキン。

 破裂しそうな心臓の鼓動が、望月くんに聞こえちゃうよっ!

 電車がゆれるたび、わたしは背中を押されたけれど、望月くんが踏んばってくれて。


「望月くん、大丈夫?」

「ヘーキ、ヘーキ。体幹をきたえるトレーニングだと思えばさ」

 どこまでもさわやかな望月くん。